待望の中国紡織
「工務店は利益を出すためにしのぎを削る」といいましたが、同じ工務店側の立場でも、私たちの意識は一八〇度異なります。
実務に徹することはもとより、お客様、建築家、工務店という三者の関係を積極的に構築できるようにコーディネートする、いわば調整役のような役割が、これからの工務店だと考えています。
そうして、お客様と建築家には「良い家をつくる」ことだけに専念してもらえるよう、お客様の予算管理や施工状況の管理、工程の管理などを着実に進めます。
つまり、お客様と建築家の橋渡しをするということです。
どんな業種でもそうですが、「先生」と呼ばれる人たちには、お金のようなべ夕なドロドロした話をするのが苦手な人が多いようです。
住宅ローン、ファイナンスや信用保証も家づくりの大事な要素ですが、建築家の範噂ではありません。
逆にそこまで建築家が乗り出すと、建築家自身にもお客様にもストレスがたまってきます。
だからこそ役割分担、適材適所でバランスを取っていくことが大事なのです。
人が生活していくなかで一番大事なことは、人間関係です。
職場も、夫婦の間も同様で、うまくいっていたらストレスはたまりませんが、いちど不信が芽生えると関係が悪化します。
家づくりにおけるクレーム、トラブルも、ほとんどが不信感から生じます。
先口もこんなことがありました。
あるお客様と建築家が、当社で打ち合わせをしました。
建築家の思い入れが大きく、お客様の予算をオーバーしてしまい、「細部を削っていこう」ということになりました。
当初は建築家主導で進行していったのですが、「予算がないから、この部屋の壁はお客様ご自身で塗ってください」「玄関から駐車場のコンクリートは、あとでお金がたまってからやることにしましょう」という話になり、見かねて思わず私が割って入りました。
か」「せっかくの新築ですし、その費用は私のほうでもちますから、土間はコンクリートを打ちましょうよ」作品に情熱を傾けるあまり、建築家の思いが先に飛んで、はたしてお客様が望んでいるのかいないのかわからぬまま、あさっての方向に行ってしまうことも、よくありますし、放っておくと、ここにストレスが発生します。
逆に「私はこうしたい、ああしたい」と、建築家の意向を無視して主張ばかり並べるお客様もおられますが、それだと建築家の熱意や、やる気が冷めてしまいます。
大切なのは「私は客だから」「私が設計するのだから」という、意識の上下関係を払拭した信頼関係をつくることなのです"家づくりにおいて大事なのは、決して駆け引きではないし、重箱の隅をつつくような情報収集でもありません。
私は良い意味で実務を知る工務店がお客様と建築家の間に入り、話し合いを前向きに現実に着地させ、さらにお互いのストレスのはけぐちになればよいと思います。
お客様が「本当はこういうふうにしたい」と思っても直接いえないときなど、私たちがリレーすることで、円滑に進行すれば済むわけです。
世の中、デジタルがこれだけ発達しても、人間関係はアナログなのです。
信頼関係、人間関係が構築されて、お客様が「先生にお任せします」といわれたら、任された建築家やわれわれは緊張と責任を感じます。
「任されたのだから、よし、がんばろう」と、ふつうの人なら思うのです。
なかには「任せてしまうと、だまされるのではないか。
いいようにやられてしまうのではないか……」と考える方もいらっしゃると思いますが、本当にそんなことをする建築家や工務店は、淘汰されていきます。
もはや、そんな時代ではないのです。
通常、建築事務所に設計を依頼する場合、建築費の一五%ぐらいの費用が必要です。
建築費が二〇〇〇万円だとすれば、二〇〇~三〇〇万円ぐらいということになります。
一般にそのなかにはデザイン料、プレゼンテーション費、設計料、監理科、コーディネート料なども入ってきます。
ちなみに監理とは、設計図など設計図書に基づき施工が行われていることを確認する、専門的なチェック機能のことです。
しかし、この一五%という数字は、決して特別に定められたものではありません。
別に法的根拠があるわけではないのです。
建築家が「その半分でも、三分の一でもOK」といえば、いったとおりの設計料が実現します。
皆さんが想像されるより、現実はもっと柔軟になっているのです。
ならば、この業務の範囲を自由に選択でき、その業務内容に見合った報酬を、お客様に決めていただくことはできないだろうかと、私は考えました。
前例のないことですが、もし「仕事の範囲も、お金も、お客様が決める」方式が実現するなら、デザイナーズ住宅を建てたいと思っていながら、建築家の事務所の扉を叩くことができないでいた方に対して、ハードルを大きく下げて、門を開くことができるはずです。
そのためには前提として、お客様・建築家・工務店という三者のしっかりしたコラボレーションが必要です。
何より建築家と私たち工務店の間に信頼関係が構築されることによって、設計の効率も上がり、全体的に無理、無駄、ムラを省き、いい仕事を、速やかに、きちんと仕上げることができるようになるからです。
まず、規場管理、予算管理、工程管理、安全管理などは、私たちが責任をもって行います。
住宅ローンや完成保証、地盤保証、一〇年保証などもすべて、私たちの守備範囲です。
地盤保証とは、地盤に原関があって建物が不均等に沈んで傾いてしまわないよう、調査し、対応することにし、万言そのうえで偏った沈下が起きた場合は、修復の費用などを保証します。
建築家には安心してお客様と同じ立場で能力を発揮してもらいます。
さらに私たちは、意匠設計、構造設計の設計士、一級建築士、級施⊥管理士、インテリアコーディネーターなどのスタッフを有しています。
これらすべてのスタッフで建築家をバックアップします。
同時に建築家に入ってもらうことにより、工務店も大きなメリットを得られます。
工務店はお客様に対し、企画・立案・プレゼンテーションをしなくてもよくなります。
元来、建設会社や工務店は、家を造ること(建築実務)は得意ですが、家を創ること(デザイン設計)は苦手なのです。
一番苦手で、一番労力のかかる部分を建築家が担当してくれることで、私たちはその部分を簡素化でき、時間と経費を合理化できます。
そのうえ建築家の監理が入ることで、現場の効率も上がります。
お客様にとっても、第三者である建築家の監理があるほうが、絶対に安心です。
そして建築家にとっても、自ら監理することで、住宅の完成度は格段に向上します。
ここでもまた、お客様を頂点とする三者の信頼関係が、力を発揮するのです。
ソフトとハードの役割分担建築家と工務店のタッグによる相乗効果、補完の効果建築においては、建築家がソフトであり、工務店がハードだといえます。
高い能力があり、人間的にも魅力がある建築家がいて、素晴らしい設計を行っても、それを施工する工務店がいなければ実現は困難です。
また、経験豊富で技術力も確かであり、財務内容も健全な工務店があっても、それを生かす建築家がいなければ宝の持ち腐れになってしまいます。
私はここに、住宅建築の本質と醍醐味を感じずにはいられません。
ソフトとハードがしっかり、それぞれの役割分担を認識して、互いがもつ力を出し合うと同時に、もっていない部分を補完し合うことで、素晴らしい家が実現できるのです。
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